<関連情報>

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       小6同級生殺害
       背景に子供の世界に広がるインターネット
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 「うぜークラス」「下品な愚民や」。長崎県佐世保市の市立大久保小学校で、6年生の御手洗怜美(さとみ)さん(12)の首をカッターで切り死亡させた同級生の女児(11)は、自分のホームページに同級生たちへの憤りを書き込んでいた。また、加害女児は「(怜美さんに)嫌なことを何度か書き込まれ、腹が立った」とも供述している。「どこにでもいる普通の子」(捜査関係者)とネット上のギャップ〜〜。「前思春期」といわれる怜美さん世代をはじめ、急速に子供の世界に広がるネットは、親の知らないところで、幼い心理や人間関係にさまざまな影響を及ぼしている。

■■急増するネット利用

 総務省の通信利用動向調査によると、6〜12歳の子供のネット利用率は62%(昨年末現在)に上り、前年の53%より9ポイントも増えた。教育現場のネット化が背景とみられる。

 文部科学省によると、小学校では02年4月施行の学習指導要領で「情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しむ」と盛り込まれ、生活科や総合学習、社会科などでネットについての授業が行われている。中学校では02年度から技術家庭で、高校は03年度から「情報」としてそれぞれ必修科目になっている。

 国のe-Japan計画により、02年度には99.5%の公立学校にパソコンが設置された。05年度までにすべての教室でインターネットに接続できるようになる予定だ。

 一方、子供のネット化に大人がついていけない現状もある。日本PTA全国協議会が昨年11〜12月に全国の小5、中2の子供を持つ親を対象に行った調査によると、ネットに関する知識が「子供の方がある」と答えた親は36%で「親の方がある」の25%より多かった。2年前の調査では「親の方」が51%と過半数を占めており、わずか2年で逆転した。

■■ストレス解消エスカレート?

 「被害者と加害女児の関係がわからない。加害女児が書き込みに悪口を書いていたことを知っていても、被害者は加害者と仲良くできたのか、それとも加害女児の書き込みは知らなかったのか、それにより全く事情が異なる。もし、悪口を書かれたうえで仲良くしていたとすれば、その人間関係は理解できない」。今回の事件について、ネットと事件に詳しい岡村久道弁護士は指摘する。

 そのうえで、一般的な傾向として「子供たちのコミュニケーション能力が全般的に落ちている上、ネットだと細かいニュアンスが伝わらない。最初は書き込みでストレスを解消していたが、だんだんエスカレートして、バーチャルではとどまらなくなった可能性もある」と話す。

■■90年代末が分岐点

 パソコン通信のころは、ISPが書き込んだ人を特定することができ、一定の歯止めができた。それが、匿名掲示板が流行し、携帯電話で簡単にメールを送れるようになった90年代末が分岐点となり、未成年もネット世界に没入するようになるとともに、事件に巻き込まれることも多くなった。

 00年5月、佐賀県でバスジャック事件では過激な言葉で「犯行予告」が「2ちゃんねる」に書き込まれた。その9日後、横浜市内の私立高校生が「バスジャックなど甘い」とネットに書き、JR根岸線の車内で見知らぬ男性をハンマーで殴った。01年12月には、やはりネットで予告して、JR新宿駅前で少年が包丁で男性を人質にし、03年8月には東大阪市の高校生が「小学生を襲撃する」と書き込み逮捕されるなどの事件が起きている。

 さらに、01年4月に茨城県の少年が出会い系サイトで知り合った主婦を殺害した事件など出会い系サイトに巻き込まれるケースや多発するネット心中など、少年たちをめぐるコミュニケーションは激変している。

 さらに、昨年11月、ファイル交換ソフト「Winny」に映画やゲームをアップしたとして著作権違法で松山市内の少年が摘発されるなど、技術の進展の一方で法の一線を超えてしまった例もある。

■■無防備な子供たち

 問題のあるサイトに対して子供たちは無防備だ。大手セキュリティー会社「シマンテック」の調査によると、44%の親が「子供が不適切なサイトにアクセスする」ことに何にも対策をしていないと回答。問題のあるサイトに接続させないサービスもあるが、親の認知度は低い。

 インターネット協会の国分明男副理事長は「親や教師の世代はどうやったらメールを見られるかなどは教えても、コミュニケーションの手段としてのマナーやルールなどを教えられる力量も持っている人は少ない。子供と一緒にネットの勉強をすることが重要だ」と話している。

■■関係を聖域化・・牟田武生教育研究所理事長の話

 「ネット依存の恐怖」など教育、子供とインターネットの関連についての著書や毎日インタラクティブ「こころのページ」の執筆もしているNPO法人「教育研究所」の牟田武生理事長(57)は「加害女児と怜美さんは、ひんぱんにチャットメールのやりとりをしていたということですが、加害女児は、メールのやりとりなどで、“自分が大切にしているものを汚された”というような感覚を持ったのではないか」と話す。

 「最近は小学生でも、『おはよう』から『おやすみ』まで、メールをやりとりする子どもが多くなっていると感じるが、2人も、このようにひんぱんにメールのやりとりをしていたようだ。その中で、精神的な関係が兄弟姉妹よりも近いと感じるものだったのではないか」と分析した。

 そのうえで「現実社会で充足感が得られなくて、寂しさとか、空虚な感じを持っていると、こうした関係や自分の内的世界を聖域のようにとらえ、汚されたくない、壊されたくない、という感覚を持つようになる。すると、相手を縛り付けたい、といった心理が出てきて、周囲から見ると“こんなことが”と思えるようなことでも、過敏に反応する傾向があり、ある言葉じりをとらえて、爆発してしまったのではないか」と話している。