◎遅刻指導のポイント
遅刻の種別
(1)正当な理由のある遅刻(病気、事故、体調不良、家庭の事情等)で
保護者から学校に連絡があった遅刻
(2)正当な理由のない遅刻(寝坊、二度寝、もたもた、のんびり等)で
保護者から学校に連絡がなかった遅刻
遅刻指導対象
・8:30のチャイムが鳴った瞬間に教室内にいない生徒(担任が判定)
・正当な理由のない生徒(保護者から連絡があってもダメ)
・保護者からの連絡がない生徒(正当な理由があってもダメ)
遅刻指導の内容
(1)毎日実施する
昼の遅刻指導(確認事項、反省作文、漢字練習)
(2)定期的に実施する
放課後の校外清掃活動(遅刻1回につき清掃1回)
(3)回数に応じて家庭に連絡する
3回、6回、9回は保護者に連絡(担任)
10回目は保護者来校(指導部、担任)
15回目は家庭訪問(指導部)
遅刻指導の意義
なぜ毎日遅刻指導をするのか。その理由は遅刻(不規則な生活習慣)は
学校生活の乱れの根源だからです。もしも遅刻がゼロの学校なら生徒は朝全員そろい、担任からの連絡も完全に行き届き、授業や学習にきちんと取り組むことができため、必然的に学力が向上します。3年間規律ある生活をすることで進路実現につながります。
ところが遅刻が多い学校は、朝の連絡が行き届かず、提出物の期限が守られない、委員会などに欠席する、授業に遅れる、授業の妨げになる、入室許可などの手続きが増え、
学校全体が落ち着かなくなります。
また遅刻は登校の時間がずれるため、通学路は人通りが少なくなり女生徒は
痴漢や変質者に遭遇し、盗撮や乱暴などの危険な目に遭う可能性も高まります。防犯上も好ましくありません。
遅刻者は、頭髪に問題があったり、成績が不振だったり、
問題行為や事故を起こしたりする傾向が強く、野放しにしておくとどんどんそのような生徒が増加していきます。
未然に特別指導事故を防ぐためには早期に問題行動のある生徒を発見し、指導していくことが大切です。遅刻指導は医療でいう
「早期発見・早期治療」に該当します。
遅刻指導を行うことで生徒との接点を積極的に作り、問題行動の芽を摘むことができます。例えば反省作文を書かせることで、遅刻生徒は自分の生活を見直し、改善させることができます。担当者が反省文に目を通し、誤字を訂正し、誤った表現を添削することで、学習効果も高まります。コメントを書くことで生徒との距離を近づけることもできます。問題生徒とを孤立させず、コミュニケーション(情報収集)を通して日常的にケアし、
生徒を正しい方向に導く効果があります。
また遅刻の回数を毎回記録することで、その生徒の変化をモニターすることができます。また学年全体で遅刻数がどのように推移しているのかを把握することができます。変動する数値を常に把握(統計データを蓄積)することで客観的に指導の効果を測ることができます。このことが
日々の指導の改善(品質向上)につながります。
また以前のように毎朝担任が遅刻指導を担当したり、遅刻数が増えてくると担任の負担は激増します。担任から遅刻指導業務を切り離し、学年指導部担当者で一括して指導できれば、担任の負担は減り、遅刻を一元的に管理することで効果的な指導が可能になります。きちんと指導することで指導部に対する担任の信頼も高まります。また担任が認定した遅刻者を確実に指導することで、生徒に対する担任の指導力の強化にもつながります。生徒指導が確実に機能すること(バックアップ)で
生徒と教師の関係の正常化に役立つのです。
遅刻は習慣性が高く、しかも感染力が強いため1年次にきちんと指導しておく必要があります。遅刻の主な原因は夜更かしや不規則な生活習慣です。毎朝決まった時間に起きることで1日がリセットされ、夜も決まった時間に眠たくなり、
一日の正しいリズムが身につきます。また遅刻を見過ごすと生徒は易きに流れる傾向が強いので、どんどん遅刻が伝染していき、2年・3年で手がつけられなくなる程に増加しまいます。(例えば学年あたり年間のべ1万回超)
遅刻にはペナルティー(昼指導、放課後清掃、保護者来校、家庭訪問)があるため、昼の休み時間が無くなったり、放課後すぐに帰宅できなかったり、教師が家庭訪問にやってきたり、生徒にとっては遅刻はとても割に合わない行為になります。
遅刻をすると面倒なことになるという評判が広まれば必然的に遅刻は減ってきます。
昼指導では毎回「反省文」と「漢字の書き取り」をペナルティーとして与えていますが、これは
学習効果を高める教育的な配慮によるものですので、生徒や保護者の理解を得やすくなります。
また放課後の校外清掃活動は校内ボランティアの一環として行いますので、
美化清掃やゴミポイ捨て対する意識の啓蒙に役立ちます。定期的に実施することで校舎周りのゴミの数は減り、きれいな環境の中での教育活動が可能になります。
たとえ生徒が遅刻指導をサボったとしても、生徒は毎日必ず学校にやってきます。翌日呼び出してねばり強く何度も指導すれば、生徒はいずれ根負けし指導に従うようになります。一度指導に従った生徒は、別の場面で指導を受けてもきちんと教師の指導に従えるようになります。また一度やると言ったことを最後までやり遂げることで「あの教師はやると言ったら必ずやる」と生徒に教え込むことができます。たかが遅刻指導とよく言われますが、その指導が持つ
教育的な意義と役割はとても大きいのです。
遅刻のみならず、生活指導全般について言えるのは、社会人になる前の生徒にとって
「高校は最後の砦」であるということです。いったん高校を卒業し、社会や進学先へ進んでしまったら、もう誰も遅刻を指導してくれたり、生活指導をしてくれる人はいなくなります。すべては自己責任で処理され、たとえ仕事や勉強ができたとしてもきちんと躾けられていない人間は脱落の憂き目にあいます。高校はそれを身につけさせる最後の段階(ラストチャンス)であり、ここが崩壊してしまっては社会全体が崩壊してしまうことになりかねません。テレビ等でご覧の通り、二十歳になり成人を迎えてから指導するのではもはや手遅れです。未成年のうちにきちんと指導しておくことがとても重要なのです。
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